
展示会がうまくいく、たった2つのデザイン
展示会を構成するデザイン要素は「空間のデザイン」と「コミュニケーションのデザイン」の2つです。展示会出展におけるこの2つの要素を上手く活用するコツをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.展示会に必要な2つの「◯◯のデザイン」
- 2.空間のデザインとは何なのか。
- 2.1.ゾーニング・レイアウト
- 2.2.ブースデザイン
- 2.3.コンテンツデザイン
- 3.コミュニケーションのデザインとは何なのか。
- 3.1.①来場者を思い描く
- 3.2.②来場者の反応を浴びる
- 3.3.③カメレオンになる
- 4.伝えたい相手に、伝わる展示会をデザインする
展示会に必要な2つの「◯◯のデザイン」
展示会のデザインと聞いて皆さんは何を想像しますか。多くの方は出展企業のブースデザインや会場内装飾デザインのことを想像するのではないでしょうか。
いわゆる「空間のデザイン」です。これは展示会には必須です。空間のデザインなくして展示会は出来ないといっても過言ではありません。
そして、もう一つ大事なデザイン要素があります。それは何でしょうか。展示会場をイメージしてみてください。
会場には誰がいますか。そこには出展者がいます。そして来場者もやってきます。展示会はその両者が出会う場で、出会ったら双方間でコミュニケーションが生まれます。ではその時あなたなら、どんな来場者と、どんなトークを展開したいですか。自社のお客さまになりそうな来場者とビジネスに繋がるようなトークを展開したいですよね。そうです、ここにデザインがあるのです。来場者との「コミュニケーションのデザイン」です。
では早速、2つのデザインについて解説していきます。
空間のデザインとは何なのか。
「空間のデザイン」とは、来場者にとって価値ある体験を創り出すための場を演出することです。自ブースに来てくれた来場者には、ためになるものを持ち帰って欲しいものです。それをどのようにデザインで表現すれば良いでしょうか。
そのためには、考えておくべき3つのポイントがあります。
ゾーニング・レイアウト
空間をデザインするためにまず考えるべきことです。このゾーニングとレイアウトは、出展スペースをどのように活用していくのか、そのために何をどこに配置するのかを検討していきます。その際に是非、次の3つを確認してください。
● 展示会場全体の中で、自ブースがどこにあるのか
● 会場入口や会場内通路に対して、自ブースがどの向きになっているのか
● セミナー会場や企画エリアなど集客力があるコーナーがどこにあるのか
その理由は、来場者の会場内での動きや目線が想定できるからです。ゾーニング・レイアウトを考える際に、来場者の動き・目線は欠かせません。来場者がブースの右から来るのか、左から来るのか、で展示製品の設置向きが真逆になることもあります。自ブースが遠くからでも見えるのか、奥まっているのか、で装飾物の高さや大きさが変わることもあります。会期中に実際の来場者の動きから気づいてもどうしようもありません。事前にしっかりと想定して計画しましょう。
ここまでは、自ブースや会場内コーナーの位置関係を考えてみました。次に、自ブースの内部について考えてみたいと思います。それは、ブース内導線です。
来場者がブースに訪問した後の導線を検討してください。ブース内には来場者のほかに、説明員もいます。ブース内でどんな流れで来場者をアテンドするのかが不明瞭であれば、ブース内を行ったり来たりして来場者を多く歩かせてしまうことになります。
これでは、ブース内での体験価値が下がってしまいます。よりスムーズなアテンドを実現できる、そんなゾーニング・レイアウトを計画していきましょう。
ブースデザイン
一番わかりやすいデザインですね。ブースの見た目です。自ブースの来場者に対する第一印象にもなり得るので、しっかりと考えたい要素です。まずは基本条件として、展示会事務局による装飾規定を確認してください。装飾物の高さ制限や、セットバック規定などの諸条件があります。これを無視してしまうと、搬入日や会期中に関わらず、修正を求められる可能性があります。これは要注意です。
規定を確認したら、その範囲内でブースをデザインすることになります。造形や配色、大きさ等を表現していきます。が、ここにも注意点が。デザインに対してロジカルな観点を持つことです。
「なぜこのデザインにしたのか」「なぜこのデザインが良いのか」というように、デザインに意味づけを行いましょう。そうでなければ、個々人の好みになってしまい、社内検討する際も、決裁者の好みに左右されてしまいます。もちろん、見た目のデザインなので、感覚的な観点も必要です。それに加えて、是非ロジカルな観点も併せ持ってください。
そして、デザインを検討する際は、デザイン会社や企画会社と一緒に考えることをお勧めします。出展者のメンバーだけでは、主観や社内都合などが影響しますので、第三者の視点を入れることでより来場者の感覚に近いデザインを設計することができると思います。
コンテンツデザイン
最後は、「コンテンツのデザイン」です。これが来場者に訴求するツールそのものです。展示パネルやチラシ、映像や壁面グラフィックなどがそれに当たります。
そして、どのツールを、どうやって活用していくのか、を考えるためには、ツールの目的が必要になります。自社のことを認知してもらうためなのか、理解を深めてもらうためなのか、という目的に合わせて、ツールの中身を作り上げていきます。
例えば、映像と一口に言っても、種類や用途は様々です。種類は、企業紹介や製品の使い方、お客様インタビューなどがあります。用途も、全来場者に向けて発信する場合や、ブース訪問者との会話の中で見せる場合などがあります。また、そのコンテンツを見る人に何を伝えたいのか、何を感じて欲しいのか、というメッセージの内容によっても、コンテンツの中身はまるで違ったものになります。
展示会では、自社製品やサービスの機能や仕様を説明したコンテンツをよく見ます。これを否定はしませんが、出展者が言いたいことに終始していて、来場者のことが考えられていないと感じます。来場者は、具体的な機能・仕様を求めているケースは多くありません。どんな来場者にどんな情報を届けると、来場者とのコミュニケーションが円滑に進められるのか。という観点を持って計画していきましょう。
コミュニケーションのデザインとは何なのか。
「コミュニケーションのデザイン」とは、限られた時間の中で、来場者と繰り広げる実りあるトークの流れを設計することです。そこには、出展者が伝えたい情報・得たい情報だけではなく、来場者はどんな情報を欲しがっているのか、という来場者目線の観点を取り入れてみてください。
そのためには、考えておくべき3つのポイントがあります。
①来場者を思い描く
展示会は数百社の企業が出展しています。相当量の情報が溢れています。来場者はそんな中から、自分に必要な情報を探すのです。自分に必要な情報がどこにあるのか探しながら会場内を歩いています。もちろん、明確な訪問ブースを決めている来場者もいますが、それでも大半は探しながら歩いています。
そんな来場者は、どうやって企業ブースに足を向けるのでしょうか。出展者と話をするのでしょうか。そこには、情報の認知から理解という意識プロセスがあります。
溢れんばかりの企業情報の中で、来場者はまず、どこにどんな情報があるのかを“認知”する必要があります。そして気になる情報であれば資料を見たり、説明員と会話したりで興味関心を深め、製品・サービスに対しての理解を深めます。つまり出展者は、来場者にまず自社のことを認知してもらい、次に理解を深めてもらう、という意識プロセスを考える必要があります。そして、どうやって認知してもらうのか、どうやって興味関心を持ってもらい、理解を深めてもらうのか。これを準備期間の早い段階でしっかりと考えておくことが重要です。
会期中は、チラシを配ったり、動画を流したり、セミナーを行ったり、様々な手段を駆使して情報発信を行うと思います。これらの手段の中身を精査するためにも、来場者は情報の認知から理解という意識プロセスを踏む、ということを是非覚えておいてください。
②来場者の反応を浴びる
事前にしっかりと準備をしたら、あとは会期中に積極的に来場者とコミュニケーションをとりましょう。きっと上手くいかないと思います。来場者は一人一人反応が違いますし、情報は欲しいけど、出展者との積極的なコミュニケーションを避けることもあります。出展者は、会話を続けることが難しいと感じることもあるでしょう。
でもそれでよいのです。それがリアルで対面する生身の来場者の反応です。その反応をたくさん受けることで、来場者の傾向が見えてくると思います。
自分の発言が、伝わりやすかったり、伝わりにくかったりするかも知れません。来場者の属性によって興味関心どころが違うかも知れません。また、来場者から質問があると、自分が気づかなかった観点に気づくかも知れません。「声掛けても断られたら嫌だなぁ」とか「うまく説明できないかも…」と不安な気持ちになることもあると思いますが、自分の言動に対して来場者がどんな反応をしてくれるのかを知ろうとする心持ちが、来場者をリアルに知るためには必要です。
③カメレオンになる
カメレオンって、環境に応じて体の色が変わりますよね。出展者も、来場者に合わせて対応を変えてみてください。来場者をリアルに知ることから始まりますが、たくさんの来場者のリアルを知ることで、コミュニケーションを円滑に進めるための重要なポイントが見えてきます。
● 来場者の業種・業界によるアプローチ如何の判断
● 来場者への最初の声の掛け方(体の角度や声色、掛け声など)の改善
● 出展内容を端的に伝える方法(説明言葉や展示品の見せ方など)の習得
● トークの流れ(質問型か、説明型か、など)の最適化
来場者に合わせてトーク展開ができると、たくさん話したい来場者とそうでない来場者の見極めができ、深掘りたい来場者とのトークを充実させることができるようになります。そして、この経験をノウハウとして社内で共有することで、展示会出展を重ねる度に、来場者対応のスキルが向上し、出展効果が高まる一つの要因になり得ます。
事前に計画した流れと異なることもあり、慣れるまでは難しいかもしれませんが、来場者は一人一人違います。事前に考えたトーク展開に固執しすぎると、せっかくのチャンスを失ってしまうかもしれません。是非、トライしてみてください。
伝えたい相手に、伝わる展示会をデザインする
展示会には、数千・数万人の来場者が訪れます。数百社の企業が出展します。お互い、求める相手・情報を見つけ出すことはとても大変です。出展者は、全ての来場者と会話ができるわけではないので、多くの来場者の中から自社の顧客になり得る人を見つけなければいけません。
誰に何を伝えたいのでしょうか。どうすれば伝わるのでしょうか。そのために2つのデザインがあるのです。「空間のデザイン」と「コミュニケーションのデザイン」です。
展示会は計画の中身と、それをどのように表現するか、が大事です。伝えたい相手に、伝わる展示会をデザインして、展示会を最大限に有効活用してください。